美しい“キレる女”役、その裏側に迫る『蒲田前奏曲』瀧内公美インタビュー

25日公開の松林うららが企画・プロデュース・出演するオムニバス映画『蒲田前奏曲』第３番「行き止まりの人々」に、女優でドラマや映画で活躍している瀧内公美が出演している。#metooやセクハラを題材にした作品で、オーディション中におこるセクハラ発言などをリアルに描いた内容となっている。そんな中で、いわゆる“キレる”役を熱演した瀧内に役作りなどお話が聞けたのでご紹介する。

ーー今回の役はどういった経緯で？
オムニバス映画『２１世紀の女の子』に参加しておりまして、その中で安川有果監督が1本の短編を作っていらっしゃってステキな作品だったので、「是非今後ご一緒出来たら嬉しいです」とお声をかけさせて頂いていました。そうしましたらこの『蒲田前奏曲』でお話を頂きました。

ーー台本を読んだ最初の感想は？
先ず、非常に難しい題材を扱った作品だな、と思いました。作品の中のオーディションのシーンはアドリブもあるんですけれども、ほとんど台本に沿ったものなんです。自分の今まで経験してきたオーディションのことを思い返すところもあれば、(松林)うららさんが実際に体験したことも映画の中で描かれていますので、こんなことを言われたりしていることもあるだろうなと共感というよりか、こんな風に感じたんじゃないかなって想像もしやすかったですね。テーマでもあるハラスメントに関しては、わたしは割と鈍感なのかな。セクハラ的なことを言われても「こうじゃないですか？」って言っちゃって(笑)。

ーーその瀧内さんのキャラって、役と被っている気がするんですけど…
スタンス的には被っていると思うんですけれども、黒川瑞季の場合それが憎しみとなって怒りでぶつける方でしたので、伝え方としては自分とはまた違うのかなっていう感じではあります。

ーーオムニバス作品ですが、他の話の脚本は読みましたか？
読んでいないです。皆さんがどういう作品を撮るのか、どういう題材なのかっていうのは企画書では頂いていたんですけれども、私が演じる黒川がオーディションで一緒になるうららさん演じる女優・マチ子の、弟との関係だったり、女友達との関係だったりっていうことくらいしか知らなくて、1本作品になった時に初めて拝見させて頂きました。

ーー役作りでしたことは？
今回はうららさんの“最も個人的なこと”を描きたいという思いがあって、自分がどういう役割を担った方がいいのか、この役柄をどういう風に感じさせたらよいのかということは安川監督と話しながら作り上げていったというところもあります。この作品を通して何を伝えたいかということが明確にうららさんの中にあったのでその考えに寄り添ってやっていくという形でした。うららさんが企画をしてこの形にしたいんだっていうことでご自身でこの作品に関わるすべてのことをやっていますから、一作作り上げる思いに賛同するというのが私にとってのかかわり方じゃないかなとも感じました。

ーー撮影をしてみて怒るシーンが見せどころかと思いますが、監督の反応はどうでしたか？
私の「ふざけんな」と、監督役の「いいねその目」っていうのも全部台本のセリフであって、そのあとに助監督の役の方が「なんなんですかね」って言うんですけど、あまりにもイラっとしすぎて、その場で感じた怒りを出しすぎてしまったとは思うんです。監督役の「いいねその目」「それがいいんだよ」っていうセリフだけあったのですが、イライラしているから、私は「ふざけんなよ」って向かって行っちゃって(笑)。その瞬間に生まれた演技ではありましたけど、安川監督はその役として黒川っていう人間の思いもわかるからOKにしますって言って下さいましたね。

ーー作品の見所は？
開始5分くらいで蒲田マチ子が経験したことを告白していくシーンがあるんですけど、そこはうららさんが最も描きたかった実体験のシーンなので、セクハラ、パワハラみたいなことが本当にあるんだっていうことを感じてほしいなと思いますし、黒川としては一番最後の笑顔が見どころですね。爽やかな終わりなんですけど、爽やかな笑いだけじゃないっていうのが私の中の考えとしてあるんです。また同じことを繰り返していくのが人間の愚かなところっていうことを表現していきたかった部分でもあるので、黒川は笑顔だけど今後どうなっていくんだろうっていうのも考えて頂けるといいなって。爆発して怒るシーンも気に入って頂いて関係者の方にあのシーン良かったって言って頂けるんですけど、最後の終わり方は大切にしたところです。

ーー完成したものは見ましたか？前後の作品とのつながりで感じたことは？
蒲田マチ子と私は女優として作品の中での関わりあったじゃないですか、友達としてのこんな顔があるんだとか、家族にだったらこんな顔を見せているんだっていうのは、私は３作目しかやっていないので発見でしたね。マチ子ってこんな人だったんだっていう。自分の作品の中でマチ子はちょっと暗いイメージだったんですけど、繋げてみると意外に違うんだなって思って、東京で思い悩んでいる3作品ありますけれど、最後の作品で久次璃子ちゃん演じるマチ子の従姉妹のりこちゃんが「お姉ちゃん羨ましい、私も女優になる！」って言っているじゃないですか。りこちゃんは“東京ってすごい！”って感じているけれども、東京で生きるってちょっと違うんだという現実のもの悲しさっていうものを感じて、4作見て色んなことを考えさせられました。

ーー怒っているシーンが印象的でした。最後の笑顔もよかった！
ありがとうございます。嬉しいです。ポスターにもなっておりましたので、ぜひご覧いただければ、と。

ーーちなみに現場の雰囲気はどうでしたか？
楽しかったですよ。短期間ではあったので集中はしていましたけれど、現場の雰囲気はよかったと思います。

ーー最後にアピールポイントを教えてください！
『蒲田前奏曲』は松林うららさんが自分が今思い悩んでいることだったり伝えたいことを形にしたいと思って、自分で制作費を集め、企画して出来上がった作品です。自分のルーツを振り返るために蒲田という生まれた場所を選んだ上、4つのテーマを元に、物語の軸となる蒲田マチ子を4人の作家が多面的に描いた作品でもあります。ファンタジー、コメディー、メタフィクションと個性豊かな作風が並んでいて、一本一本見応えのある作品です。ぜひ劇場に見に来て頂ければなと思います。

(C)2020 Kamata Prelude Film Partners

あらすじ
第３番「行き止まりの人々」＜過去とトラウマ＞
（監督：安川有果 / 出演 : 瀧内公美、大西信満、松林うらら、吉村界人、二ノ宮隆太郎、近藤芳正）
映画のオーディションを受けたマチ子。セクハラや #metoo の実体験やエピソードがあれば話すという内容だったが、皆、思い出すことに抵抗があり、上手く演じられない。そんな中、マチ子の隣にいた黒川だけは迫真の演技を見せる。マチ子は共に最終選考に残ったが・・・。

『蒲田前奏曲』
出演 : 伊藤沙莉 瀧内公美 福田麻由子　古川琴音　松林うらら
近藤芳正 須藤蓮　大西信満　和田光沙　吉村界人　川添野愛　山本剛史
二ノ宮隆太郎 葉月あさひ 久次璃子　渡辺紘文
監督 ・脚本 : 中川龍太郎 穐山茉由 安川有果 渡辺紘文
企画 : うらら企画
製作 : 「蒲田前奏曲」フィルムパートナーズ
(和エンタテインメント ENBUゼミナール MOTION GALLERY STUDIO TBSグロウディア)
特別協賛: ブロードマインド株式会社 日本工学院
配給: 和エンタテインメント、MOTION GALLERY STUDIO
2020年 / 日本 / 日本語 / 117分 / カラー&モノクロ / Stereo
『蒲田前奏曲』︎ 2020 Kamata Prelude Film Partners
公式サイト　https://www.kamataprelude.com/
Twitter　https://twitter.com/kamataprelude

9月25日(金) よりヒューマントラストシネマ渋谷・キネカ大森にて他
全国順次公開

ヘアメイク：藤原玲子
衣装協力：那由多
取材場所：リョーザンパーク

瀧内公美
公式プロフィール　http://www.y-motors.net/artist/takiuchi/

取材　マンボウ北川
撮影・編集　記者J