2023.04.14 upload
若手注目株の森田想の綿密に考えられた芝居に驚愕!
女優としてめきめき頭角を現している森田想が主演する映画『わたしの見ている世界が全て LONELY GLORY』が絶賛公開中だ。この作品では「マドリード国際映画祭 外国語映画部門」で主演女優賞を獲得するなどキラリと光る森田想のお芝居が見所。追いつめられた森田想演じる熊野遥風が奔走する姿が描かれている。そんな森田想にインタビューができたのでご紹介する。
ーーこの映画はどのような形で出演する事になりましたか?
最初、佐近圭太郎監督から是非やって頂けないかという話を頂いたんですけれども、私も家族ものっていうのはそんなにやる機会がなかったですし、主演でやらせて頂くっていうのも自分にとって挑戦的だったので、お話も面白くて、是非やらせて頂きたいというふうに話させて頂いたところから始まりました。
ーーなるほど。「この役には森田さんだ」っていうオファーが来た感じなわけですね。
そうですね。
ーー役柄とかそういうのを知った段階ではどんな印象がありましたですか?
割と我が強い役だと思いますし、自分が思っていることが正しくて、自分が誰かにしてあげることが誰かの為になるっていう風に思ってます。もちろん、冒頭にもある通り自分もうまくいってるし、優秀だし、人生もおそらくうまくいってるだろうっていうふうに思ってたんですけど、何だかうまくいかない部分もあるし、でもそのうまくいかない部分っていうのは自分のせいじゃなくて自分の持ち味を消化し切れてない周りの環境のせいっていうふうにもたぶん思っているようなキャラクターだったので、そこまでの強さというか我が物顔な感じは普段過ごしてて自分はできないのでそこが面白いなあと思って、そこをいつもの自分より過剰に演じれるっていう風な面で面白そうだなと思いました。
ーーなるほど。ちなみに撮影は大体いつ頃だったんですけど。
2021年の夏、暑い時です。
ーー撮影の時、特に大変だったことはありますか?
スケジュールもすごくあるわけではなかったので、皆さん連日撮影っていうのが大変ではあったんですけれども、農業のシーンとかすごく暑くて、体力面とかでも大変だったかなって思います。ただ“肉体的に大変”とか“精神的にすごい追い詰められる”みたいな役ではなかったので、比較的日常的に過ごしておりました。
ーー役づくり的に特に気をつけたということは?
役は実年齢とそこまで差がなくてちょっと年上の役で、アプローチっていう面もしやすかったのですが、自分が経験してない会社というか組織のなかで就職をして、そこの就職先を一回辞めるのだったり自分とは明らかに違う人生の主人公だったので、そこをどうやって自分がそういうふうに見えるかなというか、どういうふうに自分は常識人だって思いこんでいる人に見えるかなっていう風なアプローチは考えたというよりかは、やっていく中でそういう風に見えてたらいいなあと考えてやっていました。特別難しく、こういう所を自分とは差をつけて演じようとか、何か作りこんで演技してたっていうわけではないですね。わりと普段の感じにちょっと肉付けしてやっていた感じです。
ーー共演者の方で特に印象に残っている方は?
この兄弟役のお三方はすごく魅力的でしたが、なかなか大笑いするようなシーンがなかったんですけれども、最終的にはすごく皆さん良くして頂いて、和やかな雰囲気で撮影できていたので、実際にはちょっとピリピリした関係性の兄弟ではあったんですが、控え室というか裏ではすごく色々演技に対してのやり取りとかもできたので楽しかったです。
ーー兄弟とは対立関係。割と森田さんの方も正しいと思ってやってるから対立しちゃうところですね。
こっちが言うことを聞かないし、聞く耳を持たないので、そういう風な関係を招いてしまってました。
ーーなるほど。ちなみに森田さんはご兄弟いらっしゃるんですか?
実際は兄ですね。学年が三つ上の兄がいます。
ーー僕は一人っ子なんで、なかなか兄弟のことはこじれると大変そうだなとか思うんですけど。そういう問題が実体験では特に無いですか?
二人だけでそんなにケンカもしなくて優しい兄なので、ないです(笑)。
ーー割と役的にいろいろチャレンジしたような。
そうですね。精神面っていうか、調整というか、どういうふうに見えるかなっていうようなことを多く考えました。
ーーできあがった映画をご覧になった率直な感想的なものがあったりしますか?
そうですね。撮っている時に想像ができなかった部分とか、自分の見え方しかり、お兄ちゃんだったり、お姉ちゃんたちの各々のシーンっていうのが重なった時に、どんな映画になるのかなっていう期待があったので、実際試写で見てみて、映画の主軸のテーマではないですけれども、自分だけで回っていない世界というか、そういうものが実際映画にシーンとシーンが積み重なって出来上った時にすごくまとまって、自分が演じる遥風がすごく空回りしてるのも分かりやすくて、最後の方の終わり方だったりも私はすごく好きなので良かったなあっていうふうに安心しました。
ーー自分で目指して行ったらなんかこう、新たに会社を設立しようみたいなことは意外とうまくいってない感じなんですか?
うまくいってないですね。逃げられちゃったので。彼がいなくなったっていうだけで別にお金とかじゃなくて、一緒にやろうと思っていた彼がいなくなっちゃったから、まあ全部自分でやらなきゃいけなくなっちゃったし、家族のこともやっと気づいたから、どうしたらいいんだろうっていうふうにはなってるのかなって思います。
ーーそこまで大問題ではないか?
そうですね。最後、飛んじゃっただけですか?って。後輩君。
お金持って逃げたとかじゃない。この人にはついて行けないなと思って。
ーー改めてですけど、この映画の全体的な見どころと、あと森田さんの役的にここ注目してもらいたいなというふうに、それぞれお願いします。
映画としてはストーリーがあるようでなさそうなストーリーっていうのがすごく面白いと思いますし、家族の話なんだけれども、親は出てこないし、兄弟の話であって、なんだか変な方向にさせようとしているっていう。そこの設定自体が若干コミカルでありつつも、主人公に対して好き嫌いだけでは表現できないような感情を持たれると思うんですけれども、そこを含めて観ていただいた方が何かしらキャラクターに対してでもいいですし、ストーリーに対してでもいいので感じていただけるものがあるんじゃないかなというふうに思います。私自身の遥風ちゃんに対してだと、やっぱこういう人っていうのが周りにいる方が多いと思いますし、こういう人っていうかこういう言動をする人、こういう風に思いこみがちな時っていうのがあると思うので、もしそれが自分に重なった場合って、ちょっと痛いというか刺さる感じがあると思うんですよね。それを含めて自分と向き合うきっかけになれたらいいなあっていうふうに思いますね。あと遥風は物理的に走り回って、いろんな場所に行ってお節介をかけたりしていくと思うんですけど、そこらへんも自分自身で表現の仕方にちょっと日常的なナチュラルに末っ子感もありつつっていう風に完全に嫌われたくない感じでやっていたので、そこを見て頂けたらなと思います。
ーー22歳で「マドリード国際映画祭主演女優賞」を獲った感想は?
嬉しいんですけど実感がないですね。現地に出向いたりしてないので、ちょっとわからないんですけれども、こうして映画が注目されるきっかけになってたらすごく嬉しいですし、またこの作品で獲れたのも嬉しいんですけど、自分自身がいつか現地に行ったら実感が湧くのかなと思うので、ただ今は嬉しいという感じですね。作品を見て頂けたっていう事実がこの賞によって現れているので、それが嬉しいです。
ーー現地に行けてたらまただいぶ実感する?
まあコロナ禍なので、全然それはアレなんですけど、実感が何でか全然わかないんですよ嬉しいんですけど。
ーー今後の女優活動の上でどういうようなことをしていきたいか?
そうですね。今回すごくありがたく主演というふうにやらせて頂いたんですけれども、やっぱり映画っていう現場がすごく好きなんで、役の大小に関わらず映画っていうものに入ってもっと勉強したいなと思っています。
ーー将来的に特にこういう方が目標みたいな方は?
目標の方はいないので参考にはしてないんですけど、自分ができることを見つけて行きたいです。
ーー女優以外の事をなにかしようとか、そういうことはあったりしますか?
女優以外ですか? 学生の時とかは考えてたんですけど、いざ本当に女優を本業にさせていただいていると、なかなか趣味を発掘するぐらいしか考えがなくて楽しみもすごく普通で、映画観たり音楽聞いたりとかなのでとりあえずこの得意分野を延ばすっていう気持ちです。
ーーちなみに今ハマっていることはありますか?
今というかずっとハマってるんですけど、夕日が好きで夕日を追いかけてます。写真撮ったり、日が沈んでからの夕陽が特に好きなので、あの時間にだいたい外が見える場所にいることが日課です。移動とか仕事だと無理なんですけど、友達と遊んでるとかだけだったらちょっと待っててって言って夕日見たりしてます。
ーーわざわざどこかへ出かけてみたいなことはないんですね。
その時間にタイミングよく見れる場所に出向くとかあるんですけれども、車の運転ができないのでそんな絶景ポイントみたいなところにいけるわけじゃないので、細々と都内でいい場所で見てるっていう感じです。
ーー今まで特に印象に残っている夕日は?
ちゃんとキャンプ場とかいって見た時はやっぱり夕日以外何もない中で見れたので、ああいうのはいいなあって思いますね。
ーー都会よりも?
そうですね。ビルが邪魔なのでキャンプ場のほうが良かったです。
ーー映画とかでいろんなところに行ければいろんなところで見られそうですね。
そうですね、地方とかで見たいなと思います。
ーーありがとうございました。
あらすじ
熊野遥風は、家族と価値観が合わず、大学進学を機に実家を飛び出し、ベンチャー企業で活躍していた。しかし、目標達成のためには手段を選ばない性格が災いし、パワハラを理由に退職に追い込まれる。復讐心に燃える遥風は、自ら事業を立ち上げて見返そうとするが、資金の工面に苦戦。母の訃報をきっかけに実家に戻った遥風は、3兄弟に実家を売って現金化することを提案する。興味のない姉と、断固反対する兄と弟。野望に燃える遥風は、家族を実家から追い出すため、「家族自立化計画」を始める―。
森田想
中村映里子 中崎敏 熊野善啓
松浦祐也 川瀬陽太 カトウシンスケ 小林リュージュ
堀春菜 三村和敬 新谷ゆづみ
監督・編集:佐近圭太郎 エグゼクティブプロデューサー:石川俊一郎/木ノ内輝
プロデューサー:福田涼介/石森剛史 脚本:末木はるみ/佐近圭太郎
撮影:村松良 照明:加藤大輝 録音:伊豆田廉明
音楽:大橋柾人 ヘアメイク:タカダヒカル
衣裳:若槻萌美 スチール:髙木美佑 助監督:内田新
制作担当:石渡友作 美術:畠 智哉
製作・配給:Tokyo New Cinema
2022年/日本/カラー/アメリカンビスタ/G/5.1ch/82分
アップリンク吉祥寺ほか絶賛公開中!
☆森田想
2000年2月11日生まれ、東京都出身。松居大悟監督が手掛けた映画『アイスと雨音』で初主演を果たし、河瀨直美監督の『朝が来る』、NHK連続テレビ小説『エール』など、若手演技派女優として数々の話題作に出演。2022年に、映画『わたし達はおとな』2023年に、映画『レジェンド&バタフライ』などに出演。
公式プロフィール https://sticker-inc.com/artist/kokoro_morita/
Twitter https://twitter.com/kokoromorita
Instagram https://www.instagram.com/kokoro_morita/
インタビュー マンボウ北川
撮影・文 記者J