2025.03.14 upload

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橋本愛が魅せる女性同士の感情渦巻く群像劇『早乙女カナコの場合は』で主役を快演!!

女優としてだけではなく、モデル、文筆家を務める橋本愛が主演する映画『早乙女カナコの場合は』が3月14日より公開される。今回5年ぶりとなる矢崎仁司監督の最新作。原作に、日本のみならず海外でも人気を誇り、『BUTTER』や『ナイルパーチの女子会』といった作品で知られる柚木麻子による小説『早稲女、女、男』が選ばれた。本編では橋本演じるカナコが、中川大志演じる脚本家志望の長津田と出会うところから始まり、およそ10年間に及ぶふたりの恋愛模様を様々な角度から抉り出している。そんな橋本にインタビューを敢行。この映画に対する気持ちを聞くことができたのでご紹介する。

ーーこの映画に出演することが決まったときの心境について教えてください。

お声がけ頂いたのは5年ぐらい前。まずファンとして柚木麻子さんの作品に携われることが嬉しかったです。原作では“各大学あるある”みたいに敢えてカテゴライズすることでリアルな女のコたちの姿を描いているのですが、映画では詳細な大学名は出さずに「こういう人いるよね」っていうリアリティを持った描き方ができるというのも嬉しかったです。そして、原作に出てくる私の好きなセリフを、矢崎仁司監督が言葉を変えずに脚本に落とし込んで下さっていたのがとても嬉しかったですね。

 

ーー麻衣子と亜依子とカナコ。恋のライバルなのでドロドロしそうな感じもありますが、3人の関係性についていかがですか?

女性が女性に対してエンパワーメントしていく関係性が本当にすごく好きです。だからといって「男なんていらない!」と言うのではなく、恋愛も自分の人生にとって大事なものだから、ものすごく思い悩んでしまう。それぞれの葛藤を具体的に描かれているのが好きだなと思いました。

亜依子と麻衣子の繋がりはないかもしれないですが、カナコとそれぞれの2人という視点だと、カナコにとって亜依子は、「こういう編集者になりたい」という憧れの先輩。カナコはそこから学ぼうとする気持ちがすごくあって、憧れを嫉妬ではなく自分のスキルアップに繋げていける素敵な心の持ち主です。

亜依子側からしたら、カナコは複雑な恋敵でもあるのですが、やっぱり可愛い後輩。そんな相反する感情が渦巻く中、「この子にはこの子のかけがえのない魅力がある」と最終的にお互い尊敬し合う関係になっているのが、すごく素敵です。

麻衣子も同様で、逆転しますよね。麻衣子からしたらカナコは憎き恋敵で、けれど自分にはないものを持っている。「だからこんなに人を惹きつける力があるんだな」と麻衣子の中で納得したあとも、「自分はダメだ」と思うんじゃなくて、逆に自分にとってすごくポジティブなエネルギーとなって生きる活力になるという関係性が好きだなと思います。

カナコが麻衣子に対して面白いのが、そこまで恋敵として見ていないところ。“長津田の今の彼女”って思うと普通ドロドロすると思うのですが、カナコは「それはそれで彼の選択だし」という感覚もある。もちろん複雑な気持ちはあるんだけどその目線を持って麻衣子と接してないというか、ちゃんと麻衣子と向き合う時は麻衣子自身だけを見て向き合っているところがすごく素敵だなと思いました。

ーー“女性たちの群像劇”のような作品でもある。このような群像劇を演じるうえで、難しい部分はどういうところでしたか?

原作は群像劇として描かれていて、映画でもそうなったらいいなと思っていました。タイトルは『早乙女カナコの場合は』だけど、それぞれの“場合”が描かれているのでちゃんと群像劇として立ち上がってよかったです。その分、主人公として成長していく物語というより、カナコも人に対してエンパワーメントする存在であったから、「大丈夫かな。私、ちゃんと魅力的な人間になれてるかな」という不安は常にありました。原作でも映画でもカナコがアンカーなんですよね。麻衣子と亜依子は、なんとか生きやすくなった地点でのハッピーエンドとして清々しい表情を見せられるけれど、カナコはずっとモヤモヤしたまま最後まで引きずっていなきゃいけない。でも、“要所要所で自分らしく生きられているのか?” という悩みや葛藤を抱えていても、輝いているカナコを表現したかったのですごく難しかったです。今でも反省するところはたくさんあります。映画ではぷつっと切られたような終わり方なので、解釈が観る方に委ねられるようになっているところが面白いですね。

 

ーーご自身が演じた役に対して、共感する部分はありましたか?

共感ポイントは多かったです。1番大きいのは、男性恐怖症というのがカナコの中心にあるところ。その感覚はすごく身に覚えがあるなと。カナコは自分が性的な目線で見られることを忌避していて、そうならないように敢えて、いわゆる女性らしい立ち振る舞いを意識して排除している。原作では過去のトラウマのようなことも描かれているのですが、その感覚や経験は自分にとても近いものを感じたし、そうしてしかうまく生きられない感覚というのが自分ともすごく重なりました。

 

 

ーーカナコ像について矢崎監督からの指示はありましたか?

矢崎監督は役柄に対して緻密に話し合うタイプではなかったので、自分が演じたことに対して細かい調整をしていくという形がメインでした。印象に残っているのは衣装合わせに1番時間がかかったことですね。矢崎作品は体のシルエットが見える衣装が特色ですが、カナコは原作にもあるようにGAPとユニクロしか着ないぐらい実用性重視で、外見を着飾ることに一切興味がないんです。どちらかというとスポーティーに見えたりとか、マニッシュに見える必要性があるなと思っていたので、擦り合わせは念入りに綿密に進めました。それから、カナコはダサくあって欲しかったんです。でも、そこまでダサくしたくないっていう矢崎監督のこだわりもあったりしたので、絶妙なところを狙うのが難しかったです。回数を重ねて毎回時間をかけて衣装合わせしました。

 

ーー学生だった4年間とその6年後の社会人を演じられましたが、演じ分けた部分はありましたか?

明らかにわかりやすく変えているのが、ヘアメイクと衣装です。外身はこんなに変わったのに中身は全く変わってないというカナコを逆に表現したかったので、内面的なところは意図的に変えていないです。具体的に言うと、原作のカナコには“そばかす”があるんです。私もメイクでそばかすを少し付け足していて、大学時代はずっとそばかすメイクをしていたんですけど、大人になった時にそれをカバーするのかしないのか? というところがポイントだなと。大人になったカナコはどっちかというと、ほんのりカバーしているんですよね。カメラにはあまり映らないかもしれないですが、カナコの生きている実感としてほんの少し、どんどん自分らしく生きられなくなってきている窮屈さや息苦しさがそこに現れているなと思って演じました。

 

ーー完成作をご覧になって、矢崎監督のセンスが効いているなと思うシーンはありましたか?

1番はやはりダンスのシーンです。最初に長津田と出会うシーンも原作にはないので冒頭は割とオリジナルなのですが、節目節目で2人が踊るシーンはすごく映画の言語だなという感じがしました。叙情的な表現をどうリアルに落とし込もうかなというのは、自分の中での課題でもありました。でも、「そういう意味ももしかしてあったのかな」と思ったのが2人のダンス。手を取って体が触れ合うじゃないですか。性的な目線を向けられることを忌避するカナコにとってすごく怖いことなのに、初対面なのにカオスな場面で長津田から手を取られて踊るということが、カナコにとって抵抗がなく、違和感もなく、すんなりと受け入れられたということに大きな意味がある気がしています。演出としてもすごく面白いし、カナコの長津田に対しての感情や感覚をそれだけで表現されているなと。さすがだなと思いました。

 

ーー映画が完成して、今公開を前に1番関われてよかったなと思ったことはどんなことですか?

まだお客さんの声を聞いてないのでちょっとドキドキしているのですが、やはりフェミニズムの精神というかそういったものが核にある気がしていて、それがものすごく表立って描かれているわけじゃなくて、根付いているなというところです。女性だけの為のものだと勘違いされやすいのですが、むしろ男社会によって苦しんでいる男性の姿というのが、この映画にはちゃんと描かれていることが私はすごく嬉しい。微々たることかもしれないけれど、女性だけじゃなくて男性にとっても生きやすい社会を目指すことがフェミニズムで、すべてを包括するものなんだということを描けたのもすごく嬉しかったです。大学生のシーンがメインではあるけれど、10代、20代、30代それぞれの年代によって悩みの種類が変わっていきます。それぞれの葛藤がちゃんと描かれているから、いろいろな人が観てそれぞれの人生に刺さるような、そんな作品になっていたらいいなと今は期待を持っています。

 

ーーありがとうございました。

 

▼あらすじ

大学進学と同時に友達と二人暮らしを始めた早乙女カナコ。入学式で演劇サークル「チャリングクロス」で脚本家を目指す長津田と出会い、そのまま付き合うことに。

就職活動を終え、念願の大手出版社に就職が決まる。長津田とも3年の付き合いになるが、このところ口げんかが絶えない。長津田?津田は、口ばかりで脚本を最後まで書かず、卒業もする気はなさそう。サークルに入ってきた女子大の1年生・麻衣子と浮気疑惑さえある。そんなとき、カナコは内定先の先輩・吉沢から告白される。

編集者になる夢を追うカナコは、長津田の生き方とだんだんとすれ違っていく。大学入学から10年―それぞれが抱える葛藤、迷い、そして二人の恋の行方は―

 

▼予告

 

 

 

▼キャスト・スタッフ

橋本愛

中川⼤志 ⼭⽥杏奈

根⽮涼⾹ 久保⽥紗友 平井亜⾨ /吉岡睦雄 草野康太/ のん

⾅⽥あさ美

中村蒼

 

監督︓⽮崎仁司

原作︓柚⽊⿇⼦『早稲⼥、⼥、男』(祥伝社⽂庫刊)

脚本︓朝⻄真砂 知 愛 ⾳楽︓⽥中拓⼈

製作︓⽯井紹良 髙橋紀⾏ 宮⻄克典

プロデュース︓中村優⼦ ⾦ ⼭ 企画・プロデューサー︓登⼭⾥紗 プロデューサー︓古賀奏⼀郎

撮影︓⽯井勲 照明︓⼤坂章夫 ⾳響︓弥栄裕樹 美術︓⾼草聡太 装飾︓杉崎匠平

編集︓⽬⾒⽥健 ⾐裳︓篠塚奈美 ヘアメイク︓酒井夢⽉

キャスティング︓北⽥由利⼦ 助監督︓古畑耕平 制作担当︓福島伸司 宣伝協⼒︓FINOR

製作幹事︓murmur KDDI 配給︓ ⽇活/KDDI 制作︓SS⼯房 企画協⼒︓祥伝社

2024/⽇本/DCP/2:1/5.1ch/119min 映倫区分︓G

(C)2015 柚⽊⿇⼦/祥伝社 (C)2025「早⼄⼥カナコの場合は」製作委員会

公式サイト https://saotomekanako-movie.com/

公式SNS

X https://x.com/wands_movie

Instagram https://www.instagram.com/wands_movie/

ハッシュタグ #早⼄⼥カナコの場合は

 

 

2025 年3 ⽉14 ⽇、新宿ピカデリー他全国公開

 

 

 

☆橋本愛

1996年1⽉12⽇⽣まれ、熊本県出⾝。

映画『告⽩』(ʼ10/中島哲也監督)に出演し注⽬を浴び、映画『桐島、部活やめるってよ』(ʼ12/吉⽥⼤⼋監督)では、第36 回⽇本アカデミー賞新⼈俳優賞を受賞。同年に出演した連続テレビ⼩説『あまちゃん』(ʼ13/NHK)でも話題となる。主な出演作品は、映画『熱のあとに』(ʼ24/⼭本英監督)、映画『アナウンサーたちの戦争』(ʼ24/⼀⽊正恵監督)、映画『私にふさわしいホテル』(ʼ24/堤幸彦監督)など。今後は⼤河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(ʼ25/NHK)への出演を控える。独⾃の感性を⽣かしてファッション、コラム、書評などの連載を持ち幅広く活躍中。

Instagram https://www.instagram.com/ai__hashimoto/

 

 

取材・編集 記者J

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記者J

地球上すべての美しい女神を求め東奔西走。今でいう推し活をむかーしから実践していた漢

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