2026.06.28 upload

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「大人になるほど、見て見ぬふりが上手くなる」岡本玲が『ひとりたび』で届ける、心を癒す時間

映画『ひとりたび』で主演を務めた岡本玲。
故郷・和歌山を舞台にした本作は、初恋の記憶を辿りながら、自分自身の心と向き合っていく一人の女性の“再生”の物語だ。
石橋夕帆監督による繊細な演出と、上村奈帆による丁寧に紡がれた脚本は、登場人物たちの言葉にならない感情や、人生の中でそっと置き去りにしてきた痛みまでも優しくすくい取っていく。
岡本は、そんな静かな物語の中心で、表現しすぎない芝居に挑戦。「大人になるほど、見て見ぬふりが上手くなる」と語る彼女が、作品に込めた想いや撮影秘話、そして最近ハマっている“卵かけ納豆ご飯”まで、たっぷりと話を聞いた。

ーーまず、この映画への出演は、どのような経緯で決まったのでしょうか?

約5年ほど前に、石橋夕帆監督と知り合う機会がありました。出演もしている中山求一郎くんから、「岡本さんに会いたいと言っている監督さんがいるんだけど」と繋いでいただいて。

その後、ある日に三軒茶屋の喫茶店でコーヒーを飲みながら企画書を読ませていただいたんです。それから時間を経て、ようやく公開までたどり着いたという感じです。

ーー石橋監督からのオファーだったんですね。舞台が和歌山というのも印象的でした。

私で撮影するということが決まってから、監督が「じゃあ和歌山で撮影したいね」と言ってくださったそうです。当て書きというほどではないみたいなんですけど、私がお会いした時点で、石橋監督の中にはすでにストーリー設定やキャラクター像がありました。私が「参加したいです」とお伝えしてから、脚本家の上村奈帆さんに脚本を依頼されたそうなんですが、その時点で物語や登場人物の軸は、すでに監督の中で出来上がっていたようです。

ーー和歌山から東京へ出てきた主人公という設定も、意外とリアルに感じました。

そうなんですよ!!

ーー物語の冒頭では、社内恋愛が終わり会社を辞めて地元へ帰るという展開ですが、そこに至るまでの背景も気になりました。

詳しく説明しすぎていないところが、観る方それぞれの想像を膨らませてくれる部分でもあるので「そこがいいよね」と監督とも話していました。ただ、私自身は監督から本当に細かい役設定をいただいていて、生まれた時からの年表のようなものまであったんです。それぞれのキャラクターにしっかりとした背景がありました。

ーー社内恋愛の相手が、より若い女性に心変わりしてしまったという設定ですよね。

そうですね…。簡単に言えば、そういうことになります。

ーーその設定の中では、実家にどれくらいの頻度で帰っていたというような細かな部分まで決まっていたのでしょうか?

ちゃんとありましたね。お正月には帰省している設定でした。家族関係が悪いわけでもなく、美咲(役・岡本玲)自身は普通に愛情を受けて育ってきた人物なんです。ただ、どこか満たされない何かを抱えている子でもありました。

ーー初恋の相手が2年前に亡くなっていたことを知らなかったという点から、そこまで頻繁に地元に戻っていなかったのかなとも感じました。

私自身の実体験としても、実家に帰ったからといって、昔の友達に会うかというと、意外とそうでもないんですよね。同窓会のようなきっかけがない限り、友達の近況を知らないこともありますし、SNSでも必ずしも繋がっているわけではないと思います。特に中学生の頃の友達って、少し特殊な距離感がある気がするんです。高校や大学の友達になると、SNSで相互フォローして近況を知っていることもあると思うんですけど、中学生の頃ってまだ子どもだったこともあって、人によって関係性が変わると思います。だから私は、この設定はすごくリアルだなと感じました。

ーー初恋の相手が亡くなっていたことを知る瞬間は、あえてはっきり描いていないのでしょうか?

同窓会の場で友達たちが噂している話を耳にするんです。それが本当なのか、自分の知っている初恋の相手の話なのか、人違いではないのか――。美咲は、時間をかけながら確認していったんだと思います。なので、同窓会の中で友達同士の会話が聞こえてしまった、という形ですね。

ーー撮影時の思い出や、特に印象に残っていることを教えてください。和歌山で撮影されたのはいつ頃だったのでしょうか?

2023年の秋頃です。もう2、3年ほど前になるので、結構前の話になってしまいますが…。とても印象に残っているのは、中学生時代を演じた役者さんたちのお芝居です。ファミレスのシーンで中学生時代から現在へシームレスにつながっていく場面があるのですが、撮影では中学生パートを先に撮っていたんです。なので私たちは少し早めに現場へ行って、そのお芝居を見ていました。
本当に「さすが石橋監督のキャスティングだな」と思うくらい違和感がなくて。
もちろん私は、自分の若い頃を演じてくれた石山愛琉ちゃんのお芝居を見ながら、「美咲だったらこういう笑い方をするだろうな」といった特徴を掴ませてもらった部分もありました。でも何より、本当にこの子たちがそのまま大人になったら、今の私たちになるんじゃないかと思えるくらい自然だったんです。すごく好きなシーンですし、撮影していてとても楽しかったですね。

ーーなかなかありそうで、なかなかない繊細なシーンだと感じました。演じる上で特に難しかった部分はありますか?

表現をしすぎないこと…、ですかね。
監督がすごく大切にされていたのが、感情の揺れがにじみ出る瞬間だったり、自分の状態が少しずつ変化していくことだったんです。だから、綺麗になりすぎないように、日常の些細なズレや、人との会話の中に生まれるズレを大切に演じることが意外と難しかったです。綺麗に整ったお芝居だと伝わらない何かを、監督はずっと探していたと思います。阿吽の呼吸のような部分もあって、OKテイクとNGテイクの本当に些細な違いは、言葉では説明できないものがありました。それが面白くもあり、大変だった部分ですね。

ーー特に難しかったシーンはありますか?

夜のシーンは全体的に大変だった気がします。車の中のシーンもそうですし、藤原浩輔(役・長村航希)と二人で夜道を歩いているシーンもそうですね。

ーー歩いている時から、浩輔が「このままどこかへ連れて行きたい」と思っているような感情を感じました。

そこは人によって受け取り方が違うかもしれません。私の中では、もし美咲が浩輔の腕を掴んで寄りかからなかったら、こうすけはあの場で「じゃあね」と別れていたんじゃないかなと思っています。ドラマチックな方向に持っていくわけではないけれど、本人たちの心の中ではすごく揺れている。その絶妙な空気感を表現するのが難しかったです。表現しすぎず、観てくださる方の想像に委ねる。その余白が、この作品の面白いところでもあり、難しいところでもありました。

ーーでは改めて、映画の見どころや注目してほしいポイントを教えてください。

30代になって大人になっていくにつれて、自分が傷ついていることや少し立ち止まりたくなる瞬間があっても、だんだん見て見ぬふりをするのが上手くなっていくと思うんです。それも大人になるということなのかなと思います。でも、そういう気持ちを無視し続けていると、知らない間に心のどこかにずっと溜まっていってしまう。柔らかいものがいつの間にか固くへばりついているような感覚、というか…きっと人それぞれ出来事は違っても、そういうものを抱えている人は多いと思います。
この作品は、そうした心の欠片を丁寧にすくい取って描いている映画です。毎日の忙しさの中で疲れてしまった人や、昔の記憶や自分自身と向き合う時間を持てていない人にこそ観てほしいです。自分を大切にする時間を、もう一度思い出させてくれるような作品になっていると思いますし、私は“癒しの映画”だと思っています。

ーー映画のお話から少し変わりますが、最近ハマっていることはありますか?

最近、改めて卵かけご飯にハマっています(笑)。毎朝、卵かけ納豆ご飯を食べているんですが、ちょっとした贅沢として、いつも同じ卵ではなく、いろんな種類の卵を試すことにハマっています。

ーー卵と納豆は混ぜてからかけるんですか?

卵かけご飯を作って、その上に混ぜた納豆をかけています。

ーー卵かけご飯風のタレが付いた納豆ではないんですね。

はい、違います(笑)。できればタレが付いていない納豆のほうが好きです。その日の気分で、自分で味を変えたいので。

ーー毎日のように食べているんですか?

食べる時は、本当に毎日食べています(笑)。

ーーありがとうございました。

 

▼あらすじ
東京で働く主人公・美咲。10年勤めていた会社に居づらくなり退職し、将来が見えないまま実家に帰る。
地元で開催された同窓会で、初恋の相手が2年前に亡くなっていたことを知り——。空っぽだった美咲の心が、初恋の思い出で埋め尽くされていく…。

▼予告

▼キャスト
岡本玲
⻑村航希 坂ノ上茜 岩⽥奏 ⽯⼭愛琉 ⽇⾼七海 ⾥内伽奈
中⼭求⼀郎 ⻑友郁真 / 濱⽥マリ 原⽇出⼦ 平⽥満

▼スタッフ
監督:⽯橋⼣帆 脚本:上村奈帆
撮影:関 瑠惟 照明:中⽥祐介 録⾳:坂元就 美術:畠智哉
スタイリスト:⼩宮⼭芽以 ヘアメイク:安藤メイ 助監督:中村幸貴 制作担当:⼩元咲貴⼦ 編集:⼩笠原⾵
⾳楽:⼭城ショウゴ スチール:松井綾⾳ プロデューサー:⽥中佐知彦

▼作品情報
2024年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/94分/©Ippo
配給 MomentumLabo. 製作:Ippo

 

新宿K’s cinemaほか全国順次公開中!

 

▼SNS・URL
公式サイト https://hitoritabi-film.com/
公式X https://x.com/hitoritabi_film
公式Instagram https://www.instagram.com/hitoritabi_film/

 

 

☆岡本玲
1991年6⽉18⽇⽣まれ、和歌⼭県出⾝。2003年、第7回雑誌「ニコラ」専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、デビュー。以後、ドラマ・映画・CM・舞台と多⽅⾯で活躍中。主な出演作に、NHK 連続テレビ⼩説「純と愛」(12-13)、「わろてんか」(17-18)、映画『弥⽣、三⽉-君を愛した30 年』(20/遊川和彦監督)、『茶飲友達』(23/外⼭⽂治監督)、『たしかにあった幻』 (26/河瀨直美監督)、舞台「トランス」(26)など。7⽉29⽇から舞台「頭痛肩こり樋口一葉」の上演を控える。

公式サイト https://okamotorei.fanpla.jp/
公式プロフィール https://www.evergreen-e.com/feature/okamoto_rei
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Instagram https://www.instagram.com/rei_okamoto/
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インタビュー マンボウ北川
撮影 記者J
文 本間丞

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