2022.09.27 upload
若手人気女優・上原実矩が思春期の真っ只中のJKを等身大で魅せる!映画『ミューズは溺れない』公開間近!
TrenVeでも3月に映画『この街と私』で登場してくれた上原実矩の最新主演映画『ミューズは溺れない』が9月30日公開となる。若手女優として話題沸騰の上原が「第22回TAMA NEW WAVE」ベスト女優賞を受賞。作品賞でもグランプリを獲った本作では、悩める思春期の女子高生をコミカルかつシュールな上原のお芝居を堪能できるように撮られている。そんな上原にインタビューをすることができたのでご紹介する。
ーー撮影の時期は結構前だったんですよね?
そうですね。3年前、丁度夏の時期に撮っていて、コロナより前の2019年、本当にコロナが流行る前年の夏に撮っています。
ーーまずこの役はどのように決まったんでしょうか?
監督が何かで私を見かけて下さったみたいで、脚本を読んだ状態で最初にお会いさせて頂いて、その面談の中で決まったという形です。
ーーなるほど、大体目星をつけて、みたいな感じで。
目星をつけられてたんですかね。そこの真意は私はわからないですけど(笑)。
ーー撮影時期は『この街と私』の撮影より後ですか?
同じ年の冬に『この街と私』を撮影して、『ミューズは溺れない』はその年の夏です。
ーー役が決まった時の印象は?
『この街と私』は短編だったんですけど、長編の作品では初めての主演だったので嬉しかったですね。オーディションをすごく頑張って「やったー」っていう感じじゃなくて、めぐり合わせの中で一緒にやることになったので、ある意味すごく監督が脚本を託してくれた感じがあって、ずっと温めていた脚本だと思うので、そこに対してのプレッシャーだったりとか、自分が主演という立場で、長編でっていうのが初めてだったので、そこに対する自分の未知数な部分で、大丈夫かなっていうのはあって…って感じでした。「やった」っていうよりは、本当に流れの中で一緒に映画を作ることになって、決まってっていうよりは作品を通していろいろコミュニケーションをとっていたっていう気持ちが大きいですね。プレッシャーのほうが多かったのかなっていう気持ちはあります。
ーー逆に読まれていると海に落ちなきゃみたいに思ったりとかありますか?
何かアクションがあるのが好きなので…非日常的じゃないですか「それだけやっていいよ」っていうシーンだったので、ある意味自由にわーってやれたというか、泳げないとかも無かったので、そこは不安にならずに動いたなって思います。
ーーリハーサルとかで一回落ちたりして?
一回しか落ちられなかったんで、助監督と制作部の方が先に落ちて、まあこんな感じになるよっていうのを見せてもらって、落ち終わったらここにいるんでって教えて頂いていたので。
ーーじゃあ一回しか飛んでいない?
一回しか飛んでないと思います。
ーーもうちょっとヨリで落ちるのかと思ったらけっこう引きでしたね。
私もどこにカメラがあるんだろうと思っていました。カメラが対岸沿いのすごく遠くにあったので、ミニマムになってるのかなと思っていたんですけど、意外とそれよりはちゃんと写ってるなって感じ。楽しかったです。
ーー絵になっているような溺れかかったようなシーンががっつりあるのかなって思ってたりしましたが。
絵では溺れていますね。そういう溺れているシーンも撮ったのかな? 撮影の細かいカットがあんまり思い出せないんですけど、もしかしたらとバシャバシャやってるところは長回しで撮ってますよね。溺れている時はどこにカメラがあるっていうのはあんまりわからず、もう“水”っていう感じでした(笑)。
ーー泳げる人の泳げない芝居だったということですね。
そうですね。
ーー役柄の設定的にはどうでしたか?
朔子は色々なことに対して不安だったりとかを抱えているコではあったんですけど、抱えている問題が直接自分と関わりがあるかって言ったらそういうことではないんです。でも、創作の苦悩だったりとか、自分が何者なのかわからないっていうのは、マイノリティ以外でもいろいろ壁になることがあるんじゃないかなと思って、そこでちょっと通ずるものがあったので、頼りにしていたという感じですかね。劇中の朔子ちゃんはずっと迷っているというか、霧の中をずっと歩いてるみたいな印象があって、私も同じ感じで現場中は一緒にさまよっていたみたいなイメージがあります。
ーー思春期というか、青春時代ってすべての人が迷いがちですよね
そうですよね。多かれ少なかれあると思っていて、傍からは突き進んでいるように見えても、そのコはそのコで違う事を抱えていたりとか、種類は別にしても全くないものではないなあと思って、そこでちょっと役との共通認識じゃないですけど、持ってたなって思います。
ーー高校生役はほとんど悩まずスムーズにできましたか。
その頃は20歳だったので、まだどちらかというと10代から片足が抜けていないっていう印象が個人的には強かったのですね。その後も『私がモテてどうすんだ』という作品を撮っていて、そこでも制服を着てたりするんで、あの時期はまだそこまで制服に抵抗はなく高校生の気持ちも全くわからないみたいなわけでもなく、まだ高校生と同じような悩みとか迷いみたいなものを抱えていた時期ではありました。ですが私はこの3年ですごく色々変化があったので、個人的にはまた新しいものが見ていける気がするなーっていうのは感覚的にあるんですけど、当時はすごく10代の集大成みたいな印象はあるかなと思います。
ーー監督さんの印象はどうでしたか?
すごくピュアなのですがこだわるところはこだわって、だからこそ3年っていう時間が経ってもちゃんと一つのものを完成させて、一つの作品としてちゃんとまとめ上げてるという根性というか、そんなエネルギーみたいなものを凄く感じてました。一見割と小柄だし、そんな風には全然見えないんですけど、自分の芯が通っているなあっていうのは、撮影中もすごく感じたましたね。
ーー監督さんから要求されたこだわりは?
細かく言われるみたいなことはあまりなかったと思います。リハーサルとかもしてたんですけど、その都度疑問に思うことを話しながら、私も初めての長編で不安だったし、監督もきっと初めて長編で監督するっていうので、きっとお互い現場で寄り添い切れないこととかもあったとは思うんですけど、そういった部分も含めて映画にいい影響が出ているのかなと思ってます。だから何かここをこだわるとかはなかったんですけど、そういう部分を含めて手探りで寄り添いながら二週間くらい撮影していたわけです。
ーー割と役的には任された感じ。
そうですね。でも監督が譲れないというか、ここっていうこだわる部分もきっとあって、その都度話し合いながら進めていったという感じです。
ーー共演者の方の印象は?
お父さん役の川瀬陽太さんにすごく助けられたなあというか、現場が若手ばかりだったので、どんと構えている感じは居てくれるだけで安心でした。もちろんお母さん役の広澤草さんもなんですけど、やっぱりお母さんとやりとりが多かったので、お父さんとの関係性がすごく朔子に影響しているというか、どっちかっていうと、やっぱお父さんとのうまくいかなさ、娘と父親っていう母親とは違う部分でどんと構えてくれている感じですかね。そこはすごく心強かったですね。
ーー設定としては、新しいお母さんが来てるんですよね、
はい。
ーーしかも兄弟が産まれてかなり複雑な状況ですね。
単純に考えるとそうですね。
ーーでもそこまで崩れてるわけではない。
うーん、関係性がってことですよね? 観てどう思いました?
ーーなんとなく邪険にしてるようなしてないような。
多分そこかな。受け入れたいけど受け入れられないというか、本当のお母さんの記憶もあるし、それこそ新しいお母さんを受け入れることによって自分が壊れちゃうんじゃないかみたいな、自分が変わっていっちゃうんじゃないかみたいな、そういう不安もきっとあったので、様々な見え方がありますよね。
ーーで、しかも住んでる家も出なきゃいけない。
そうなんです。結構振り回されるというか、自分では分かってはいるけど自分の意見ではどうにもならないとか、お父さんも好きだけど、でも変わることに対応していかなきゃいけないっていうのは高校生のその時期ならではってわけでも無いかもしれないんですけど、うーん、でもものすごく本人が全部理解して、すごく苦しそうにしてるかっていったらそんなことでもなくて、そういう朔子がモヤモヤしているものに対して、無理矢理答えを出して押し付けたりしない映画として、言葉として表現されていない部分なのかなと思って、割と自由に感じ取ってもらえればいいなと思いますね。他の取材の方でも「映画の余白みたいな部分をすごく感じた」って言って頂くことが多くて、そうやって感じ取ってもらえるのは映画の醍醐味だと思うし、そうやって楽しんで頂ける作品で、割と結構キャラクター性の強い者が多かったので、また違ったアプローチができて評価して頂けたというか、感想を頂けたら嬉しいなあと思います。
ーー「私はまだ人を好きになったことがない」というセリフを聞いて共感しましたか?
そういう問題全てに共感したっていうわけではなくて、うーん、好きになったことがない… 難しいですね。じゃあ私が好きになったことがあるっていうのが本当に好きなのかって言われたらまたちょっと違うじゃないですか、それって誰にもわからないことなんですけど、そういう中で迷ってたりするのかなと。自分で探していくんだと思って、あのセリフにどう思ったって言われると、私も当時そこに引っかかって監督に「このコってマイノリティ的にこういうコですよね」っていう質問を投げた時があって、その時ってやっぱり3年前で私も何事に対しても答えが欲しいというか、導いてほしいみたいな感情があったんですけど、この間インタビューを受けた時に、田辺・弁慶の映画祭の壇上で監督が「それぞれのセクシャリティーは簡単に線引きできるものではなくグラデーションでできていると思う。性的指向や性自認は、ある特定のマイノリティだけの問題じゃなくて、すべての人に関わる問題だと思う」って仰っていたのがすごく心に刺さったってインタビューの方が仰っていて、そうだよなーというか、別にマイノリティとかそういうものに限らずに、どっかに属したいというか、何かに対して決めつけたいというか枠が欲しかったりしちゃうことが私も多いし、その当時はそれがなかったからすごく不安だったっていうのもあるんです。でも、それがなくてもいいよねって言えたら、なんかもっと楽になるのかなというか、自分が何者か探したくてもやもやしちゃうことがあるんですけど、その言葉に関してじゃあ君は何だねっていう決めつけることは、いろんな考えがあるので、一概にどうとは言えないんですけど、そうやって認識しているだけでも大人というか、それが分かっているだけでも、すごく人間としては成長するのかなみたいなことはなんとなく思ってたりとか、ちょっと答えがなくて難しいんですけど…。
ーー台詞として「好きになったことがない」っていうのは、映画全体的にインパクトがあるセリフだったなと思うんですが。
そうですね、難しい所ではあります。
ーー朔子役の見所というか、ポイントをお願いします。
撮影から初号に至るまで2年経ってたんですね。私はやっぱりすごくモヤモヤした時期というか、自分でも若干10代に片足突っ込んだような時期の撮影で、本当にどうなってるかわからないという気持ちがあったんですけど、初号を見た時に、客観的には見られなくてむず痒い気持ちとかもあったんですけど、監督の創作に対する愛情みたいなものを全編から感じて、個人的にはすごく編集に助けて頂いたなあっていうのがあったので、改めて映画っていろんな人の力によってひとつひとつ創り上げるんだなというのを感じました。私自身がどこを見てほしいっていうよりは、その全体を通して、監督の創作のやりたいことの塊というか、映画作りの原点みたいなものだと思うので、そういう部分を感じ取って頂けたらいいなと思います。その作品の上に私たちがいるので、全体を通して、淺雄監督の思いみたいなのをすごくいろんな所に散りばめられてるので、劇場で受け取って頂ければいいなあと思ってます。
ーー「TAMA NEW WAVE」でベスト女優賞を獲られましたが、それに関してはどうですか?
作品として映画賞に行きたいというのも目標にしていた一つではあったんですけど、こんなに早く行けるとは思ってなかったので、もちろん目指してやるぞっていう気持ちはありつつもそこに向き合った結果だなあと。普段ってやっぱり目に見えないものが多いというか、感想だったり「よかったよ」とか不確定なものではあるので、会場に行ってそういう言葉と一緒に作品も認めてもらえたっていうのは自分の中ですごく自信にはなりましたね。
ーーこれは授賞式もあったんですよね。
はい「TAMA NEW WAVE」は東京都だったんで伺いました。「田辺・弁慶映画祭」は地方だったので行けなかったんですけど、YouTubeで観ていました。
ーーどうですか?授賞式は。
本当に頂けるって思ってなかったので、実感が全然なくて、その時は他人事ぐらいの気持ちだったんですけど、いろんなものを見せて頂いたなあというか、映画賞に連れていって頂いたりとか、個人の賞を獲らせて頂いたりとか、何年も温め続ける監督のエネルギーだったりとか、色んなものをこの作品を通して学ばせてもらったなあっていう印象です。。
ーーまもなく正式に公開ですけど、どうですか?
監督や演者やスタッフが短い期間の中で頑張っていました。こんな風に上映されたり映画祭に行って作品賞を獲ったりとか、本当に想像してなかったことなので不思議な気持ちではあります。おもちゃ箱じゃないですけど、そんな作品なのかな、監督のこだわりがいろんな所に散りばめられています。でもその想いを受け取れるのって、やっぱり劇場しかなくて、期間は短いんですけど、足を運んで頂けたらと思います。
ーー初日の舞台挨拶が楽しみですね。
大丈夫かな~、喋れますかね? 今までテアトルには一回だけ立ったことあるけどその時は主演っていう形ではなくて、ちょこんといるぐらいだったので、コロナ禍で劇場とかも減ってるんですけど見に来て頂けたらと、頑張って喋るので、よろしくお願いします。
ーーありがとうございます。
あらすじ
美術部に所属する朔子は、船のスケッチに苦戦している最中に誤って海に転落。それを目撃した西原が「溺れる朔子」の絵を描いて絵画コンクールで受賞。朔子の絵は学校に飾られるハメに。さらに新聞記者に取材された西原は「次回作のモデルを朔子にする」と勝手に発表。朔子は、悔しさから絵の道を諦め、代わりに壊れた鳩時計などを使って造形物の創作に挑戦するが、再婚した父と臨月の義母、そして親友の栄美と仲違いしてしまう。引っ越しと自宅の取り壊し工事が迫る中、美術室で向き合う朔子と西原。”できること“を見つけられないことに焦る朔子は、「なぜ自分をモデルに選んだのか?」と西原に疑問をぶつける・・・。
キャスト
上原実矩 若杉凩 森田想
広澤草 新海ひろ子 渚まな美 桐島コルグ 佐久間祥朗 奥田智美 菊池正和 河野孝則 川瀬陽太
スタッフ
監督・脚本・編集: 淺雄 望 撮影監督:大沢佳子(J.S.C) 制作担当:半田雅也 照明:松隅信一 美術:栗田志穂
ヘアメイク:佐々木ゆう 監督助手:吉田かれん 撮影助手:岡田拓也 録音:川口陽一 整音:小宮元、森史夏
カラリスト:稲川実希 スチール:内藤裕子 音楽:古屋沙樹 音楽プロデューサー:菊地智敦 油絵:大柳三千絵、在家真希子
企画・制作・プロデュース:カブフィルム 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
企画・制作・プロデュース:カブフィルム
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト|配給協力:ミカタ・エンタテインメント
2021年|82分|16:9|カラー
©カブフィルム
公開情報
東京・テアトル新宿 9/30(金)~ 全国順次公開
大阪・シネリーブル梅田 10/14(金)、15(土)
HP: https://mikata-ent.com/movie/1205/
Twitter: @musehaoborenai
☆上原実矩
公式プロフィール https://hirata-office.jp/talent_profile/woman/miku_uehara.html
Instagram https://www.instagram.com/miku_uehara/
取材 マンボウ北川
撮影・文 記者J