2024.01.25 upload
今“アツい”女優・吉田美月喜が魅せたアイヌ文化に感涙!映画『カムイのうた』公開!!
ドラマ、映画、舞台と活躍する人気沸騰中の女優・吉田美月喜(よしだみづき)が主演する映画『カムイのうた』が全国公開間近だ。本作はアイヌ文化を後世に残し19歳の若さで亡くなった知里幸惠をモデルとし、激動のアイヌの歴史を描いている。また、様々な世界の映画賞を受賞。カルカッタ国際映画祭(インド)インターナショナル映画部門では最優秀賞作品賞。モントリオール・インデペンデント映画祭(カナダ)で優秀作品賞。グランド・シネ・カーニバル・モルディブ(モルディブ)で優秀作品賞。スペインのハーキュリー・インディペンデント映画祭でも優秀作品賞を受賞。そんな壮大なスケールの本作で主人公・テル役を演じた吉田に撮影時の様子などをインタビューできたのでご紹介する。
ーー今作はどのような形で主演することになったのか教えてください。
オーディションで決めて頂きました。映画の中のワンシーンを動画で撮って送って、その後実際の髪型と着物に着替えて、映画の撮影で使うカメラでカメラテストをするという経験をしました。海外のオーディションだとけっこうあるそうなんですが、初めての経験だったので驚きました。
ーーオーディションの時の手応えはありましたか?
正直、分からなかったです。菅原浩志監督は感情をストレートに出す方じゃなくて、内に気持ちを持って話される方なので、私の演技が良いと思ってくれてるのか分からないままオーディションを受けていました。
ーーテル役が決まった時の感想はいかがでしたか?
「学校でアイヌ文化を少し習ったことがあったかも?」くらいのアイヌの知識だったので、決まった時は責任感を感じてより気持ちが引き締まりました。
ーー監督さんから決め手は何だったのか聞かれましたか?
直接はお伺いしてないです。でも、他の取材の時に「吉田さんを選んだ決め手は何ですか?」と監督が聞かれた時に、「この映画を見て下さればわかります」と言ってくれていました。決まった後にアドバイスはもちろんありましたが、私の演技や姿勢をずっと肯定して下さったのは嬉しかったです。
ーー撮影した時期はいつ頃ですか?
夏は2022年7月上旬から約1か月間。冬が2023年1月に2日間ぐらい撮影をしました。
ーー実際の撮影はほとんど北海道ですか?
私が撮ったシーンはほぼ北海道です。少しだけ別の撮影場所もありましたが基本的に北海道で、夏に1ヶ月くらい、冬に2日間行って雪のシーンを撮りました。
ーー北海道での撮影はいかがでしたか?
私は北海道に行ったことがなかったのですが、夏の北海道の過ごしやすい気候にビックリしました。冬の北海道は「こんなにも寒さが厳しいのか」と思いました。私は出来る限りの防寒着を中に仕込んで、靴下もあたたかいものを用意していただいたのですが、当時はそんなものはない訳で、「どうやってこの寒さの中で生きていたんだろう」と不思議でした。ひとつ驚いたのが、冬の撮影の時に藁のブーツを履いたのですが、雪と水分が一切入ってこなかったんですよね。当時の方の技術や工夫に驚きました。
ーー滞在している間は共演者の方と夜、ご飯に行ったり?
コロナ禍での撮影というのもあって多くはなかったんですけど、皆さんと地元の蕎麦やスープカレー、イタリアンなどを食べに行きました。それと、一ヶ月間泊まっていたところにキッチンがあって、時間がある時は近所のスーパーに行って野菜を買ってきて料理をしていました。ジャガイモの美味しさに驚きましたね。それぐらい水と空気が綺麗なんだろうなって。そんなことをしながら過ごしました。
ーー撮影で特に大変だったことや頑張ったことはありますか?
テルは作品の中であんまり多くを語らない役柄なんです。セリフもすごく少なくて、何も言わずに思っていることを伝えるシーンがある一方、今まで抑えてきた思いが高ぶって言葉にできないシーンもあって演じるのがとても難しかったです。例えば、「なんで差別を受けてまで学校に行かなきゃいけないの?」と作品の中で初めてテルが自分の思っていることをしっかりと表現するすごく大切なシーンがあって。そのシーンまではセリフがなかったのでここぞとばかりに気持ちを出しているつもりでも、上手く気持ちが出せなくて何回も撮り直しをしました。
ーーアイヌの言葉は難しかったですか?
とても難しかったです。ユーカラも楽器のムックリもですが、アイヌの音楽的なものって自由度がすごく高くて、音程があるわけでも決まりのリズムがあるわけでもない。その人の感情とか個性が加わっていくものなので、同じものを聞いたまま表現するだけだと何も情感が伝わってこないんです。最初、東京にいる時に録音してもらったユーカラを聴いて、できるだけ同じようにキレイに歌おうと練習をしてたのですが、現場で実際にアイヌの方に教えて頂いた時に「全然伝わってこない」と厳しく言われました。ただ歌うのではなく、物語を考えながらもう一度イチから練習をして、最後に撮ったものは良かったと言って頂けました。監督も仰っていたのですが、この映画を作るにあたって「自分がアイヌ」だとまだ言いたくない、周りに知られたくないという方がいる中で、こうしてこの作品に参加して下さって厳しく指導して下さるというのが、この映画に対する思いの強さを感じてすごく嬉しかったです。
ーー喋るセリフはいかがでしたか?
自分の知らない言葉だとどうしても、見本をしている人の音程に引っ張られてしまうんですけど、「これは普通に話してるだけだから今あなたが話しているように普通にしていいんだよ」と修正をしてもらいました。
ーーメイクとか何か特徴はありましたか?
私は普段から眉毛がしっかりある方なのですが、この作品が決まってからは「絶対にノータッチでいてくれ」と言われていました。あと髪型も基本的に黒髪ボブが多かったのですが、髪も伸ばして前髪もなくしました。普段作品をやる時に眉毛を描き足したりはないのですが、今回は違和感のない程度にしっかり黒いペンシルで描き足されて、ポスターの自分を見ても「これ私かな?」って思うぐらい全然違う雰囲気でした。あと、島田歌穂さん(イヌイェマツ役)もすごくわかりやすく口のところに刺青のメイクをしていらっしゃって昔は本当に刺青をいれていたそうなので、刺青のメイクを初めて見た時は衝撃でした。
ーーでは、主人公テルのポイントや見どころをお願いします。
私は撮影当時テルと同じ19歳だったのですが、19歳の女の子がこれだけ命をかけて自分の文化を守ろうとする姿勢っていうのにすごく刺激を受けました。初めテルはそんなに喋らないんですけど、ずっとメラメラ燃えているものを内に秘めていて、周りの人に感化されて打ち出していく強さっていうのは、キャラクターとしての見どころでもあるし魅力だなと思います。「テルは孤独だったのかな」って思うかもしれないけれど、そうではなく、周りにはずっとテルを応援してくれる味方の人が絶対にいて、それはきっと現代を生きる人の中でも、同じアイヌの方もそうですし、この社会で孤独を感じていたり孤独と戦ってる人たちにも「絶対に味方が近くにいるから大丈夫だよ」っていうことを、私はこの映画ですごく感じました。
ーー映画全体の見どころもお願いします。
本当に驚いたシーンがあって。血が流れている姿を見て、「同じ赤い血か!」って驚くセリフがすごく衝撃でした。「人間だから赤い血に決まってるじゃん」って思いましたが…。でも、それだけ無知ということはすごく怖いことだなと思いました。まず知ることから始めれば何か違うことがあるんじゃないかなって思いますし、そういう世界になってくれたら嬉しいなって」未熟ですが思います。私がアイヌの文化を知らなかったように、この映画を見てアイヌの文化やこの映画で描かれているような事実があったことをたくさんの方に知ってもらえたらいいなと思います。
ーー亡くなったシーンを演じて、何か思ったところはありますか?
作品の中で「俺が無理をさせてしまったからかもしれない」と兼田教授(加藤雅也さん)も仰っていたんですが、畏れ多いことを言わせて頂くと、私はテルとして生きてすごく幸せでした。特に亡くなったシーンを演じた時に兼田教授の奥さん(清水美砂さん)が泣いてくださって。でも「それってなんでだろう?」って思った時に、一三四(望月歩さん)とか兼田教授はテルにとってすごく近い存在の人でしたが、兼田教授の奥さんはちょっと離れたところにいるキャラクターで、そんな人が泣いてくれるほど、テルは愛されていたんだなと思ったら、孤独に感じていた部分がそうじゃなかったんだなってすごく幸せな気持ちになりました。
ーー2024年、こんな一年にしたいというのはありますか?
ずっと変わらずにあるのは色々な引き出しを持ってみたいということなので、様々な役を経験してみたいです。この映画で学んだことといえば“物一つ一つに神様が宿っている”という考え方で、自分はそんなこと考えてもいなかったので驚きでした。今は便利な時代で色々なものが溢れているから、ひとつひとつ全部というのは難しいかもしれませんが“物に生かされているんだ”っていう考え方を、少し頭の片隅に入れながら生活してみたいなって思います。
ーーありがとうございました。
☆あらすじ
アイヌの心には、カムイ(神)が宿る――
学業優秀なテルは女学校への進学を希望し、優秀な成績を残すのだが、アイヌというだけで結果は不合格。
その後、大正6年(1917年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学したが土人と呼ばれ理不尽な差別といじめを受ける。
ある日、東京から列車を乗り継ぎアイヌ語研究の第一人者である兼田教授がテルの伯母イヌイェマツを訊ねてやって来る。アイヌの叙事詩であるユーカラを聞きにきたのだ。伯母のユーカラに熱心に耳を傾ける教授が言った。「アイヌ民族であることを誇りに思ってください。あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ」
教授の言葉に強く心を打たれたテルは、やがて教授の強い勧めでユーカラを文字で残すことに没頭していく。
そしてアイヌ語を日本語に翻訳していく出来栄えの素晴らしさから、教授のいる東京で本格的に頑張ることに。同じアイヌの青年・一三四と叔母に見送られ東京へと向かうテルだったが、この時、再び北海道の地を踏むことが叶わない運命であることを知る由もなかった…。
☆映画『カムイのうた』
吉田美月喜/北里テル役
望月歩/一三四役
島田歌穂/イヌイェマツ役
清水美砂/兼田静役
加藤雅也/兼田教授役
監督・脚本 菅原 浩志
プロデューサー 作間 清子
撮影 上野 彰吾
美術 長 寿恵
編集 時任 賢三
助監督 桑原 昌英
製作協力:写真文化首都「写真の町」北海道東川町
1月26日(金) 全国上映開始・4劇場にて舞台挨拶決定(詳細はオフィシャルページより↓)
Ⓒシネボイス
☆公式サイト https://kamuinouta.jp/
☆吉田美月喜
公式プロフィール https://www.stardust.co.jp/talent/section2/yoshidamizuki/
Instagram https://www.instagram.com/mizukiyoshida_official/
インタビュー マンボウ北川
撮影・文 記者J