2024.03.12 upload
レトロ感たっぷり…あの頃に活躍した若松監督ドキュメントをリアルな若者役で芋生悠が快演!!
続々の映画出演で存在感を放つ芋生悠が出演する最新映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』が15日公開となる。伝説の監督、若松孝二監督が奮闘した時代をそのまま描いた、ほぼほぼノンフィクションの作品となっている。名古屋に作られたミニシアター「シネマスコーレ」を舞台に若者たちが熱狂していく姿が興味深く映る。そんなどこか哀愁のある物語を、探りながら演じた芋生悠に撮影の様子などを聞くことができたのでご紹介したいと思う。
ーー今回の映画の出演はどのように決まったのか教えて下さい。
オファーして頂いて、台本を頂きました。内容がとにかく面白くて、純粋に演じてみたいなって気持ちがあったので「ぜひお受けしたいです」と即答でした。
ーーどの辺がやってみたいと思ったポイントでしたか?
私はすごく映画が好きで、この話は本当に映画愛に溢れていると思います。それぞれが愛しかない中で葛藤する姿が描かれているのですが、特に私がお受けした金本法子という役は、他の役とはちょっと違った部分で葛藤していて、やりがいがありそうだなと思いました。
ーーそれは大体いつ頃のお話でしょうか?撮影は?
2022年の年末近く。その年中にご連絡を頂いていたと思います。
ーー 撮影の時期はどのぐらいだったんですか?ほぼ名古屋で撮ったんですか?
ほぼ名古屋でした。2週間ぐらいですね。
ーー簡単に役柄を説明していただいてもいいですか?
私の役は、在日韓国人で映画監督を目指している大学生なんですけど、監督としてはちょっとくすぶっていてなかなかうまくいかず、映画サークルのメンバーにも逃げられ、夢をなかなか叶えられない葛藤がある子。そんな中、シネマスコーレの木全純治さんと出会ってどんどん心情が変わっていくっていう役柄です。
ーー(記者Jに向かって)映画観て、どうでしたか?
記者J:笑って泣きました。
芋生:嬉しいですねー。
記者J:最後、若松監督が映画館の後ろから入ってきたシーンで、ブワーって泣きました。
芋生:あのシーンで泣いてくれたんですね。
記者J:本当に戻ってきた! みたいな感じで。
芋生:井上淳一さんが若松孝二監督さんのこと大好きなんだなっていうのが伝わりますよね。そこで泣いてくれたら井上さんも嬉しいと思います。
ーー撮影時のエピソードや、印象に残っていることはありますか?
若松監督を演じている井浦新さんはじめ、東出昌大さん(木全純治役)、杉田雷麟君(井上淳一役)とは共演するのが初めてだったので、純粋に一緒にお芝居できるのが楽しみで現場に向かっていました。本当に皆さん気さくな方たちで、普段は自然体なんですけど、撮影が始まると魔法がかかったみたいに井浦さんは急に若松監督になるんです。スイッチをバチッて変える感じじゃなくて、気づいたらそこに若松監督が降りてきている感じで、不思議でした。東出さんが演じた木全さんは、ご本人が現場にいらっしゃったので、木全さんご本人と演じている東出さんが隣に並んでいたりすると、動きが全部シンクロしていて(笑)。見ていて面白かったです。杉田君が演じている井上さんも(本作の監督だから)実際に現場にいらっしゃるのですが、金本としては「井上」って呼んでいたので、監督の前でも「井上は…」みたいに言っちゃうと、井上さんがびっくりしてて(笑)。現場にご本人がいらっしゃる不思議さとか、先輩役者さんたちが憑依する瞬間が見えたのがすごく楽しかったです。
ーー演じた金本役は実在する方はいらっしゃるんですか?
10年後くらいにシネマスコーレでバイトされていた在日韓国人の方で、モデルになった方がいらっしゃるんですけど、時系列でいうと実際にはこの映画の時代にはいないので、私の役だけは特別に作って頂いた役です。皆さんは実際にいらっしゃる方を演じられているので、それはそれで難しかったと思うのですが、私は逆に実際はいないので、馴染んでいくのがなかなか難しかったのですが、周りの役者さんたちが、完全にその人としていらっしゃるので、一緒に掛け合いをしながら作っていけました。
ーー舞台が昭和ですが、その世界に出演してみて昭和に対して思ったことはありましたか?若松監督がタバコのポイ捨てしてをしてましたよね(苦笑)。
私の役もけっこうファンキーで、タバコをポイ捨てしてましたね(笑)。 実際にシネマスコーレにある現役の映写機が、「ガー」って音が鳴って映し出される瞬間を見ることができたのは尊いなと思いました。手作業で動かして、「ガガガガ」って映し出されていく感覚とか、そのフィルム一本にいろんな歴史や思い出が詰まってるんだなあと思うと、いい時代だなって思います。実際の映写機がまだ残っているので、ぜひシネマスコーレに見に行って欲しいです。
ーー若松監督がどこでもタバコを吸っていたのに、記者Jはとても共感をしてました。電車とかバスに灰皿が置いてあったりと…。
どこでも吸えていた時代ですもんね。周りの人も誰も気にしないっていう時代。いいなあって思います(笑)。
ーーちなみに芋生さんは若松監督とは接点はあったんですか?
全くないです。お会いしたこともないです。だから余計に、みんなが本当に若松監督のことを好きなのが伝わって、どういう人だったのかだんだん分かってきました。厳しいところは厳しいですが、愛情が根底にある人だからみんなずっと好きなんだなって思います。
ーー前作ではスタッフ、キャスト若松監督を知っている方が多かったそうですが、今回はキャストもスタッフもほとんど若松監督とお仕事されたことがなかったそうですね
井浦さんが本当によく知ってらっしゃるので、映画の中で若松監督が金本の名前を間違えるんですけど、あえて間違えてましたね。「若松さんはね、毎回、ちょっと違う呼び方をするから、違います。ってちゃんと訂正してね」と井浦さんが教えて下さったので、いろんな名前で呼ばれても「違います。金本です!」みたいなアドリブをやっていました(笑)。
ーーなるほど。改めて役の見どころを教えて下さい。
金本は常に井上少年のことを目の敵というかライバル視して睨んでいる。金本からしたら井上少年がキラキラして見えるんですよね。同世代で、なんであのコはうまくいってるのに、自分はうまくいかないんだろう。ずるいなあって思う気持ちがすごく理解できるし、モヤモヤして人に当たるべきじゃないっていうのもわかっているのにうっぷんを晴らすところがなくて、結局人に当たっちゃったり。そういう人間味のある役です。でも、金本の中でも一皮剥けたいんですよ、本当は。映画が好きで、何者かになりたいし、もっと成長したいという部分があるから、人にぶつかったりして、若いコたちにはすごく伝わる部分があるのかなと思うので、愛されるキャラクターになるといいなと思います。
ーー映画全体の見どころもお願いします。
若松監督や木全さんのような大人たちと、金本と井上のような少年少女たちが、葛藤しながらも守りたいものがあったり叶えたい夢があったりっていう気持ちがシンクロしている。大人と少年少女たちが結束している姿にすごく勇気をもらえるので、ぜひ大人も子供も含めていろんな世代の方々に観て欲しいなと。“一生懸命で本気なのところがかっこいい”と思える作品だと思います。最近声に出して笑える映画ってなかなかない気がするんですが、この作品では笑わせようとしていなくてみんな本気なのに、なぜか笑っちゃうという。そんなところが魅力になっています。
ーー有名映画監督の悪口を言うところとか、つい笑っちゃいますよね。
その作品とか監督の名前がわからなくても何故か笑っちゃうと思うし、全然予備知識がなくても笑える映画なので、気楽に声を出して劇場で笑って欲しいです。
ーー今後の目標や野望はありますか?
今、自分が監督をした作品を撮りきって編集している段階です。初監督で全部実費でプロデュースからやっているので、それをみんなに観せるのが、まずは目標です。
ーーいつ頃完成予定ですか?
今年中くらいには完成させて、お披露目したいなって思ってます。
ーータイトルは決まってるんですか?
タイトルはまだちょっと言えないです(笑)。
ーーだいたい何分ぐらいの尺なんですか?
中編ぐらいになりそうな感じなんですけど、短編にしたいなとは思っています。
ーーすごい! 監督をやりたいと思った理由は?
「監督やりたい」ってよく言ってました。今回のきっかけは監督をやりたいというよりは、無性に映画が作りたくなってしまって…。どんなモノでもいいから作りたいというところから始まりました。なにより映画って、照明部とか録音部とか全員が本当に必要で、全員で総合芸術。なので、いろんな現場で出会った大好きなスタッフさんたちと一緒に仕事がしたいって、速攻呼んで集めました(笑)。衝動的に照明さんたちにお声がけして、企画の段階から一緒に話し合いながら、光をどうしようかと現場でも照明のことを先に話したりしてみたり、「遊んでいいですよ、むしろ遊んでください」って具合です。現場で各々がやりたいことをやれるということを自分の中では目標にしていました。
ーー将来的には本格的に監督をやりたい野望があるのですか?
脚本を書くのがやっぱり難しいなと思ってます。脚本を書けるようになるっていうところが課題ですかね。
ーー基本的には全部自分でやっちゃいたいって感じ? 逆に監督になっちゃえば脚本は誰かに発注しちゃえばいいのでは?
うまくマッチしたらいいんですけど、みんなでモノづくりをするのはなかなか難しいことでもあるなと。ある程度自分の中で決まった状態じゃないと人にも伝えづらいし。ゼロの状態からみんなでモノを作るというのはなかなか難しいけど、挑戦したいことでもあるかなと思います。
ーー挑戦したいし、具体的にやっているということですね。すげえ!です。 ありがとうございました。
▼イントロ
映画を武器に激動の時代を⾛り抜ける若者たちを描いた『⽌められるか、俺たちを』から10年後。1980年代。時代も⼈も変わった。シラケ世代と⾔われ、熱くなることがカッコ悪いと思われていた時代。ビデオが普及し始め、映画館から⼈々の⾜が遠のき始めた時代。それに逆⾏するように、若松孝⼆は名古屋にミニシアターを作る。その名はシネマスコーレ。ラテン語で「映画の学校」。⽀配⼈に抜擢されたのは、結婚を機に東京の⽂芸坐を辞め、「これからはビデオの時代」と地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをやっていた⽊全純治だった。⽊全は若松に振り回されながらも、持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていく。そこに吸い寄せられる若者たち。まだ⼥性監督のほとんどいなかった時代。⾦本法⼦は「⾃分には撮りたいものなんか何もない」と⾔いながら、映画から離れられない。⽥舎の映画⻘年だった井上淳⼀もまた映画監督になりたい⼀⼼で若松プロの⾨を叩く。⼰れの才能のなさを嫌でも⾃覚させられる⽇々。それでも、映画を諦め切れない。救いは、⽊全が度々⼝にする「これから、これから」という⾔葉。今がダメでも次があ。涙だけじゃない。そこには笑いがある。絶望だけじゃない。希望がある。この映画は僕の、私の物語であると同時に、あなたの物語でもある。これはあなたの⻘春の物語だ。
▼予告
▼映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』
井浦 新 東出昌大 芋生 悠 杉田雷麟
コムアイ 田中俊介 向里祐香 成田 浬 吉岡睦雄
大西信満 タモト清嵐 山崎竜太郎 田中偉登 髙橋雄祐 碧木愛莉 笹岡ひなり
有森也実 田中要次 田口トモロヲ 門脇 麦 田中麗奈 竹中直人
脚本・監督:井上淳一
企画:木全純治 尾崎宗子 井上淳一 プロデューサー:片嶋一貴 木全純治
音楽:宮田岳 撮影:蔦井孝洋 照明:石田健司 録音:臼井勝 音響効果:勝亦さくら
美術:原田恭明 装飾:寺尾淳 衣装:橋爪里佳 鈴木沙季 ヘアメイク:清水美穂
編集:蛭田智子 助監督:小原直樹 製作担当:伊藤成人 演出応援:村谷嘉則
製作:若松プロダクション シネマスコーレ 製作プロダクション:ドッグシュガー
配給:若松プロダクション スコーレ株式会社
2023年/日本/カラー/DCP/5.1ch/ビスタ/119分
©若松プロダクション
2024年3月15日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
公式サイト http://www.wakamatsukoji.org/seishunjack
X アカウント https://twitter.com/tomeore2
▼プロフィール
芋生悠
1997 年12 ⽉18 ⽇、熊本県出⾝。 2015 年⼥優業をスタート。映画をはじめ、テレビドラマや舞台、CM への出演多数。着実に実績を積み2020 年公開の主演映画『ソワレ』(外⼭⽂治監督)で各⽅⾯から、より注⽬される。近年の主な映画出演作品に『37 セカンズ』(20/HIKARI 監督) 『#ハンド全⼒』(20/松井⼤悟監督)『HOKUSAI』(21/橋本⼀監督)『ひらいて』(21/⾸藤凛監督)など。
公式サイト https://harukaimou.com/
Instagram https://www.instagram.com/imouharuka/
インタビュー マンボウ北川
撮影・文 記者J