2021.08.21 upload
映画『あらののはて』1枚1枚が絵画のような作品!舞木ひと美&成瀬美希インタビュー
女優、ダンサー、プロデューサーとマルチに活躍している舞木ひと美が主演・プロデュースした映画『あらののはて』が公開中だ。この作品は門真国際映画祭2020、最優秀作品賞、優秀助演男優賞、優秀助演女優賞の三冠を獲得。うえだ城下町映画祭第18回自主映画コンテスト審査員特別賞(古廐智之賞)も受賞している。舞木演じる大人になった野々宮風子が高校生時代に感じた感覚を求め、同級生だった大谷荒野(髙橋雄祐)に迫って…というストーリーで、その間に起きる事象が不思議な雰囲気を醸し出している。そんな役を務めた舞木と共に、高校時代の風子のクラスメイト・前田役を演じた成瀬美希も加えWインタビューが実現したのでご紹介する。
ーーまずは成瀬さんから、どのようにして役が決まりましたか?
成瀬美希(以下、成瀬):元々は眞嶋さんがやっている役で舞木さんにオーディションに呼んで頂いたのですが、その役ではなく新しく役を作って頂いて決まりました。
舞木ひと美(以下、舞木):オーディションには外れちゃったけどすごくお芝居が上手なので、私が監督に「成瀬ちゃんを使って欲しい。どうしてもこの作品に入れたい」って言ったら、監督が成瀬ちゃんのオーディションの時の雰囲気に合う役を作って下さったんです。
ーー撮影はどれくらいの期間でしたか?
舞木:二日間で撮りました。成瀬ちゃんは一日だけ。映画全体で二日間です(笑)。朝4時半スタートでずっと夜までやって、一日撮休が入って、もう一日撮影をして終わりました。
ーー成瀬さんの出演は、二人でケンカした部分と、先生とのやり取りした部分?
成瀬:あと一番最初の教室にもいました。「ガム食べた」ってチクった人です。
ーーチクっている人なんだ。その部分重要ですよね。
舞木:ピントも合ってないもんね、そのセリフ。成瀬ちゃんもずーっと映っているんですよ、ずーっと私のことを睨んでいます。
成瀬:そうなんです(笑)。是非二回見て確認して欲しい。
ーー事前に情報を出しすぎてもあれですね。
舞木:難しいところですね、でも細部まで目を配らせて見て頂きたいっていうのはあるかもしれないです。観客の皆さんは、一つのフレームの中でメインのやりとりを追うと思うんですけど、そうじゃない所の情報量も結構あるので、2回目に観る際には、そういう所も見てもらえたら。長回しが多いので見るタイミングがあると思うんですよ、ウォーリーを探せじゃないですけど、色んな細部まで。映画館のスクリーンだったらわかりやすいかなと思うんで。
ーーご自身として意識をした部分は?
成瀬:全体的にリアルを追及と言われていて、変わったことはしなくていいという方向性だったんです。その中でちょっと意識したのは、「ブラジル国旗を直してきなさい」と先生に怒られる時に風子も隣にいるんですけど、ケンカをした直後に近い距離にいるから絶対すぐに出て行きたい気持ちを優先させたり、私がフレームから外れている時に「お前は残れ」と言われた際の答えの感情のリアルさは大事にして、どういうスピードで画面に入っていったら面白いかなって考えたりしました。
ーー全体を見たときに自分の役の印象は?
成瀬:元々ない役ではありましたが、いなくてはならない役になったなというのは感じました。風子と荒野の不思議さを出しているのは私だなって、見ている人が一番わかりやすいところにいるんじゃないかなと思います。
ーー実際に学生時代に揉めたこととかは?
成瀬:6年間女子校でしたが揉めることもありましたね。男の子に関することだと友達の彼氏と話しちゃって怒られるみたいな。今考えると、トラブルメーカーな方ではあったかと思います(笑)。
ーー舞木さんはプロデューサーということは、この映画を作りたいという立場?
舞木:元々のスタートは長谷川監督たちがルネシネマさんという映画製作団体をやっているんですけど、私は裏方もやっているので、ルネシネマさんで今後何かやっていく時に、キャスティングとかできるコを入れた方が強みになるし、映画を今後コンスタントに撮っていく時にスタッフで関わって欲しいから、舞木さんで一本映画を撮るから手伝ってっていうのがスタートだったんです。で、「わかりました」って言った次の日くらいにプロットが来て、A4、2枚ぶんくらいのけっこう細かくストーリーが書かれているもので、すぐに「この企画めちゃくちゃ面白いじゃないですか」って言って動き出したので、企画を立ち上げたのは私ではなく監督からです。そこから「プロデューサーとして入るのでスタッフのキャスティングや制作面など私がやります」ってやり始めた感じですね。スタッフは当日しかほぼ動いていなくて、それまでは私と監督と2人だけでロケハン行ったり…っていう感じです。
ーーという意味でも思い入れはある?
舞木:もちろんです。本当に好きな人達と作品作りが出来たなって心底思います。キャスティングも手掛けられたっていうのもそうですし、自分の相手役をこの人とやってみたいっていう人にオーディションをかけられたのもありますし。その時点でオーディションが楽しみじゃないですか。どんな人が来るかなっていうスタンスじゃなくて、どういう風に芝居を持ってきてくれるかなって期待度が高い所もそうですし、スタッフも色んな現場で出会った人達で、自主映画って大変なところもいっぱいあるんですけど、そういうところを楽しんでくれるスタッフさん達っていう信頼があったんで、みんなで現場も楽しくできました。助け合いながら、お互いの部署関係なく、理想的な作品作りが出来たなって思います。
ーー主演してみて、前半の高校生役はどうでしたか?
舞木:イヤですよ(笑)。プロットを読んで面白かったですけど、「高校生の設定どうにかなりませんか?」って言ったら、「映画はそこが面白いんだよ」って言われて、「あ、そうなんですか」って(笑)。当時30歳だったんで「30歳ですよ」って言ったら、「本当にやりたいキャストで常に挑戦してやっていけるのが自主映画の良さだよ」って深い感じで言われたました。8年の差をつけるのが大変でしたね。
ーー差をつける工夫はどうやって?
舞木:まず自分の8年前を思い返したんですよ。30歳の8年前は22歳で相当差があるじゃないですか。金銭面でも生活のリズムとか社会に対しての考え方とか。でも風子ってその常識にハマらない役だなって自分の中で答えを見つけられたので、変わらない部分がたくさんあるコなんだろうなって思いました。演じ分けとしては無邪気さとか自由奔放さとかを意識しました。8年後のジャングルジムのシーンも、8年前のシーンと同じで女の子同士が取っ組み合いをするなんてなかなかないじゃないですか。変わっていないからこそこういうことが起こりえるんだなって思って、変えないようにしようという結論に達しました。8年前だから変えよう、大人になったからこうって、最初はそういう入り口で考えたんですけど、何も変わっていないっていうことを追求しようと思って、動き方歩き方とか、敢えて全く一緒にしてみました。考え方も、行動も、常識はハマらないコなので、普通しないよねっていう無邪気さは残しておきました。
ーー8年後のシーンの髪は?
舞木:あれはピンク色のウィッグですね。その前のシーンの絵画教室の時のコスプレです。絵画教室のモデルでデッサンする時に変わり映えしないからっていうのでウィッグを付けて、あの後に行っているんですよ。ウィッグを付けたまま荒野君の家に行っている。そこも突っ込みどころですよね、取らないの?って。
ーー自分の役の見所と映画全体の見所を
成瀬:私の役で言いますと、みんなの記憶に残るであろうオープニングの取っ組み合いのシーンはなかなか印象的ですよね。そこから職員室に行くところが見どころかなと思います。
映画全体でいうと、私がこの映画で特に気に入っているのが、撮影技法です。逆光で撮ってい
たり、全てを提示しない映画の余白に着目して映画館のスクリーンで見て欲しいです。
舞木:監督も「見えることが現実じゃない」ってよく言うんですよね。それはこの映画にすごく表れているなと思っています。監督自身も昔舞台の演出でも活動していた方なんです。本作を一個の舞台として見てもらった場合、スクリーンではなくて、そこに袖からキャストが入ってくる、袖にはける、袖で新展開があってキャストが舞台上に出てくるっていうような感覚でも見てもらえると思います。”スクリーンから出ちゃった”ではなく”キャストがはける”っていう感覚になれば、すんなり入ってくるんじゃないかなと。土手の所もそうですし、最後に学校の校舎があってばーっと情景が早回しで色味が変わっていくところがあるんですけど、監督がけっこうディティールを気にする方で、情景だったら色味とか絵画を見ているような感じで、一個一個の画に対して拘りが強いので、それも面白くアーティスティックだなって思います。逆光の時もキャストのシルエットとかに拘っています。あとは、長回し、ワンカットが多いので、自分の青春時代と重ね合わせながら見て頂けるといいかなと思います
ーー最後に、今後の活動について
成瀬:有名になりたいです。というのも、改めて、お芝居が好きだと感じました。生業として自分がこの人生でやりたいことは表現し、後世へ記憶を残していくことで、作品を撮り続けること、作り続けることが自分の中でとっても大切なことだなって感じました。そこにいるあなたに届ける、後世に残していくことをめげずに続けたいなと。日本だけに留まらず世界にも行きたいですね。
舞木:今回初めてプロデュース・主演という二刀流みたいな形で関わったんですけど、大変だったんですけど、それ以上にめちゃくちゃ楽しかったんですよ。今年の10月くらいに自分がプロデューサーに入って一本映画を撮る予定です。それは主演ではないんですけど、俳優さんは俳優部、スタッフさんはスタッフさんに留まらず新しい形で自分が頑張れるフィールドがあるなら全部に立ってみて、大変かもしれないけど、そういうやり方で今後も出演したりプロデューサーをしたりダンスで関わったり、何かにとらわれずに必要とされれば楽しんでやっていきたいとこの映画を機にさらに思いました。
ーーありがとうございました。
あらすじ
25歳フリーターの野々宮風子(舞木ひと美)は、高校2年の冬にクラスメートで美術部の大谷荒野(髙橋雄祐)に頼まれ、絵画モデルをした時に感じた理由のわからない絶頂感が今も忘れられない。絶頂の末に失神した風子を見つけた担任教師(藤田健彦)の誤解により荒野は退学となり、以来、風子は荒野と会っていない。
8年の月日が流れた。
あの日以来感じたことがない風子は、友人の珠美(しゅはまはるみ)にそそのかされ、マリア(眞嶋優)と同棲している荒野を訪ね、もう一度自分をモデルに絵を描けと迫るが…。
出演
舞木ひと美 髙橋雄祐
眞嶋優 成瀬美希
藤田健彦 しゅはまはるみ
監督・脚本:長谷川朋史
配給:Cinemago 配給協力:GigglyBox/Cinemaangel
<2020年/日本/カラー/16:9/DCP/69分> ©ルネシネマ
公式サイト:https://runecinema.com/aranonohate/
Twitter:https://twitter.com/aranonohate
Facebook:https://www.facebook.com/rune.aranonohate
8月21日(土)〜9月10日(金)池袋シネマ・ロサにてレイトショーほか全国順次公開
☆舞木ひと美
1989年9月13日生まれ。宮城県出身。
女優として活動するとともに普段はダンサーとしても活躍している。近年では、映画『ヤクザと家族TheFamily』の主題歌「FAMILIA」に振付師として参加。他にも舞台、ドラマ、CM等の振付を数多く手掛けている
Twitter https://twitter.com/maki_sindy
☆成瀬美希
1994年12月5日生まれ。東京都出身。
2015年夏、パチスロ「リング終焉ノ刻」でデビュー。舞台「夜を、徘徊。」(’18)に主演するなど、4年間舞台をメインに活動後、映画、CM、MVと演技の幅を広げている。近年は、MOOSICLABJOINT2020→2021グランプリ受賞作品『POP!』(’21)に出演し、美術も担当している。
Twitter https://twitter.com/_nalbamikki
Instagram https://www.instagram.com/_narusemiki.honmono/
取材 マンボウ北川
撮影・編集 記者J